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病院

Echuca Regional Health病院でのVPPの取り組み

デマンドレスポンスで精密医療機器を守り、レジリエンスを高め、収益を得た事例

Echuca Regional Health病院のMark Hooper氏へのインタビューまとめ

Echuca Regional HealthがVPPに参加したバックグラウンド

Echuca Regional Health病院は、エネルギーマネージメントとサステナビリティに対する総合的かつ先進的なアプローチと、実績のあるイノベーションで、地域内で広く認知されています。

 

オーストラリア最大級のメガソーラーを備えており、暖房に活用するだけでなく、病院の高効率HVACシステムに吸水冷房(注1)を供給しています。また、ピーク時のエネルギーマネージメントに利用する1.2MWの蓄電池を持ち、500kWの太陽光パネルを追加で建築中です。

 

さらに、2017年より、バックアップジェネレーターを活用したバーチャルパワープラント(VPP)に参加しています。

VPPとは仮想発電所のことで、電力を使用する需要家、小規模な再生可能エネルギーの発電所、蓄電池、燃料電池などの分散型エネルギーリソース(DER)を集めたポートフォリオのことで、それらをIoTを活用して統合的に制御することで、あたかも実在する1つの発電所のように機能させるシステムです。

 

 

Echuca Regional Health病院のExecutive Project ManagerであるMark Hooper氏は、VPPへの参加は病院にとって自然なことだったと語ります。「脆弱化する送電網に対応し、バックアップ電源インフラに再投資することで、システムの信頼性をさらに高めることができます。」と語りました。

 

注1) 吸水冷房とはフロンではなく、「水」を冷媒とした空調システムのことです。ナチュラルチラーとも言います。

picture of grid

VPPとは

バーチャルパワープラント(VPP)とはどのようなシステムなのかを詳しく説明しています

計画外停電から病院を守る

オーストラリアでは、石炭火力発電所の廃炉がすすみ再生可能エネルギーが急速に普及しており、送電網の信頼性に影響を与えています。送電網を安定させ、電力価格を下げ、停電の拡大を防ぐために、送電網はVPPのような代替電源からの柔軟な追加容量を必要としています。

 

VPPに参加すると電力需要が供給を上回る可能性があると事前に通知されるというメリットがあります。Hooper氏は、「電力網が常に信頼できるものであることを期待していますが、そうではなくなってきています。当病院は、24時間365日、一次医療を提供するという病院の本来の目的のために、施設を確実に利用できるようにしている必要があります。VPPに参加すると、送電網が不安定になることを事前に通知してもらえるので、送電網の障害に備えることができます。VPPへの参加は、患者さんの安全を守るもう一つの方法だと考えています。発動要請があることが分かれば、直ちにジェネレータを起動して送電網から離脱し、停電を防ぐことができます。」また、Hooper氏は「当病院では、敷地内のジェネレータが病院を完全にカバーしているので、送電網と同期して自分自身をオフラインにすることが可能です。そのため、発動時に予定外の停電が発生することもなく、シームレスな移行が可能です。VPPに参加することで、発動に対応するための報酬を得ることもでき、Win-Winのシナリオです。」と付け加えました。

緊急事態への備えの新たな基準を確立

Echuca Regional Health病院は、VPPに参加することで、停電が発生する可能性が最も高い時間帯や状況で、バックアップジェネレータの能力を定期的にテストすることができるようになり、緊急事態への備えと停電に対するレジリエンスの真のテストができるようになりました。Hooper氏は、「メリットは、高負荷がかかる可能性が高い時間帯にジェネレータを稼働させることができることです。重要なのは、送電網に電力が十分供給されているときにジェネレータを稼働させてみるということだと思います。普段はジェネレータを稼動させない時間帯にテストを実行し、問題(が見つかればそれ)を解決することができる。とても優れたプログラムです。」

 

「実際に停電が起きるのは、おそらく夏の暑い日、それも望んでもいないときでしょう。VPPに参加することで、高負荷がかかる暑い日でもジェネレータが十分に機能を発揮することを事前に確認することができます。」

 

「このプログラムを通じて、私たちが把握していなかった問題が見つかったこともあります。事前にこのような問題を解決しておくと、停電になってジェネレータを稼働させなければならなくなったときにはすべての問題が既に解決されているため、レジリエンスが備わっているといえます。」

 

「VPP参加の一環としてジェネレータを動かしていれば、オーストラリア規格で義務付けられている毎週の負荷運転テストの要件をすでに満たしていると考えてもらえるため、テストを延期することができます。」と彼は続けました。

デリケートな精密医療機器を守る

Echuca Regional Health

VPPは、大規模な発電所や送電網が突然故障した場合、送電網の周波数の偏差に迅速に対応し、連鎖的な送電網の故障を防ぎます。Echuca Regional Health病院は、このプログラムに参加することで、病院が提供するサービスにはとても重要な精密機器の保護にも役立っています。


Hooper氏によると「周波数障害が発生すると、VPPは自動的に施設を当病院の発電機に切り替えます。当院には電圧ノイズや周波数偏差に敏感な精密電子機器があります。送電網が必要なパラメータを満たさない場合、その時点で送電網から離脱します。短い時間に頻発する停電によって敏感な電子機器を破壊するようなことがなくなったので、とても助かっています。すでに似たようなことはしていたので、このプログラムに参加して報酬を得ることは理にかなっていました。」

新たな収入源

Hooper氏は、病院にとってVPPへの参加は、すでに行っていることに対して報酬を得ることであり、その報酬をトップレベルの二重化システムの確保に再投資することができるという、まさに理想的なアプローチであったと言います。「私たちのビジネスモデルは継続的な改善に基づいており、常に不足している要素のひとつは資金です。病院は収益を生み出していますが、エンジニアリング部門は一般的に収益を生み出す部門ではありません。すでに稼動している資産から収益を得られるのは嬉しいことです。このプログラムに参加することで、継続的な改善に必要なすべての要素を満たし、資金を生み出すことができているのです。」
送電線

デマンドレスポンス

電力需要のピーク時に、電力の供給、社会、環境に貢献し、収益を得ることができる画期的なプログラムがデマンドレスポンスです

VPPは病院と地域の送電網、双方にメリット

Echuca Regional Health

Echuca Regional Health病院は、Australian Energy Market Operator (オーストラリアのエネルギー市場運営機関が、送電網において新しい形態の容量が緊急に必要であると表明しているものを提供しています。VPPは、費用対効果の高いソリューションであり、既存の資産を利用することで資源をより効率的に利用し、高価な化石燃料を利用した新しい発電所を建設する必要性を回避し、迅速に構築することができます。

 

Hoopers氏は、「我々は小規模な需要家ですが、VPPは多くの需要家が集まって協力するものです。今は、周りの人たちにも参加を勧めています。病院のにはたくさんの設備がジェネレータを持っており、いずれにせよテストをしなければならないからです。」

 

「VPPへ参加することで得られた収入を使ってジェネレータの容量を増やした設備もあります。また、自動切替え装置の設置やPLCのアップグレードに使ったケースもあります。病院のバックアップシステムの信頼性を向上させるために資金を投入することで、送電網に供給できる信頼性の高い容量が向上するのですから、Win-Winの関係です。」

お客様情報

Echuca Regional Health病院

Echuca Regional Health病院は、オーストラリアの総合病院で、24時間体制の救急外来、急性期医療、一次医療、産科医療、小児科医療、高齢者医療、地域医療、高齢者介護サービスなどのサービスを提供しています。

注:この事例は、オーストラリアでのEnel XとEchuca Regional Health病院との契約に基づいています。日本では、エネルエックス・ジャパンがカスタマイズした製品やサービスを日本のお客さまに提供し、電力消費量(料金)の削減、新たな収益源の獲得、カーボンニュートラルに関する目標の達成をサポートしています。詳細については、こちらよりお問い合わせください。  

参考サイト

このページは、Institute of Healthcare Engineering Australia誌に掲載された記事をまとめたものです。